グラブジャムンの思い出

グラブジャムンって知ってっか。
世界一甘いって言われた食べ物。

ずっと食べてみたくて、近年ようやく口にできたからその思い出話。

長年の甘党だ。根っからの。ドがつくほど。
胡椒に泣き、唐辛子にブチ切れ、カレーの中辛に嘆き、飴の舐めすぎで虫歯になり、ケンタのビスケットは人の余ったメープルソースを追加でもらう程度に。

甘党が過ぎたる頃、母親から「あんたなら世界一甘いインドのドーナツも食べられそうね。」と言われたことがある。
それこそがグラブジャムン。正確にはドーナツではない。
小麦粉と砂糖水を練って丸めたのを揚げてシロップにこれでもかと芯まで浸したデザート。
ミルク分を入れるだの入れないだのはなんか色々あるらしい。
が、作ったことも、できるところを見たこともないので詳しい話はよくわからん。

とにかく、存在は知ったけどどこで食えるのかいまいちわからんまま過ごした。
大人になる頃にバカでかい缶詰の存在を知るものの、残したら怖いし食い切る勇気はなかったので手は伸ばさなかった。

それから上京してしばらく経った頃、インド料理の店に行く機会があった。
そしたらいたのだ。メニュー表に。


2粒だけ。食べきりサイズ。

めちゃ美味しい上ナンがアホほどデカくて物量がアホほどあるサービス精神旺盛の店だったから、私も一緒に行った友達もみんな満腹だった。
でも頼んだ。だって食べてみたかった。
お前ほど甘党じゃないから頼んで残しても誰も骨を拾わないぞと宣告はされてたけど。それでも。

届いたグラブジャムンは想像と違い、温かかった。
ぬくくてしみしみなのに崩れず球を保つしっかりとした生地と、温かいからなんかハーブ的な良い香りがたちのぼるシロップ。
異国のデザート!知らん土地の匂い!感満載。
ワクワクしながらスプーンで切り取って小さく食べた。

甘い。確かに甘い。
でも、正直みかんの缶詰シロップのが甘くね?
いや確実に甘党以外は無理な甘さではあるが。
それよりもシロップの美味しさ!
現地はローズシロップという薔薇の香りがするシロップを使うらしい。
が、これはカルダモンかなにかスパイスの香りと、もっと複雑な香りが混ざっていた。薔薇……ではない気がする。わからん。すごく良い香り。
想像よりも歯が溶けるー!!みたいな暴力的甘さになっていないのはこの香りのおかげかもしれない。

他には代え難い香りと、シロップに使っても形状を保つ独特な生地の食感の織りなす甘さに美味い美味いと言いながら食べた。
気づいた頃にはシロップまで食べ切っていた。
怖いな、カロリーが。

ちなみに、友達2人もなんだかんだ一口ずつかけらを食べた。(美味さの共有を図って味見してもらったとも言う)
が、「いや、確かに思ったより美味いけど馬鹿甘いよ」という反応だった。
やっぱり甘党以外はダメかも。

暑くなってきたので、また食べたいな。